BBL -ボケがボケるレンズ-

【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/1000sec, ISO100, 0EV】

 BBLという改造レンズが存在する。

BBL
http://bbllens.tumblr.com

 これはSONY(MINOLTA)の135mm STFのように、絞り近傍に周辺ほど濃くなるNDフィルタのようなものを置くことで、光束の周辺部を減光しボケの輪郭を柔らかくするものだ。
 この仕組みは富士フイルムの56mm F1.2 APDや、KickstarterでコケたCM33のウォーターハウス式絞り板のうちの一枚や、最近では中国のLAOWAが出したSTFのパクリなどいろいろなものが出始めている。
 BBLはおそらく構造としては富士の56mmやCM33に近いものであろうと推測される。

 このBBL、現在の対応レンズは7種類。
 そのうち一本がSIGMAの50mm F1.4 EX DG HSMだ。
 他のレンズも可能な限り対応するとある。しかし私が改造を頼むものはSAマウントレンズとなるので先方側で確認する手段を持っていないのではないかという懸念があり、実績のある50/1.4EXで依頼することとした。

 このBBL改造のために新たに50mm F1.4 EXを入手したので、まずは改造前に一度試写した。基本的に素のボケを見るためなので開放中心だ。

_SDI1218
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/1250sec, ISO100, 0EV】

_SDI1220
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F5.6, 1/400sec, ISO100, 0EV】

_SDI1228
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/4000sec, ISO100, 0EV】

_SDI1238
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/125sec, ISO100, 0EV】

_SDI1246
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/320sec, ISO100, 0EV】

 そこまで強い二線ボケはないが、軸上色収差によるボケの色付きが目立つ。BBL化によってこの色付きもマシになってくれるのではないかと期待しつつ改造を依頼した。

 懸念していた確認であるが、SAマウントであってもアダプタを介して種々確認は行ってもらうことができた。
 このBBL、使用上の注意として開放以外では露出がズレる。
 通常のレンズではF1.4からF2.0に絞った場合は光量が半分になるが、BBLでは周辺部の光量は非常に低いためにほぼ光量は変わらない。しかし開放測光のカメラではBBLのような特殊なレンズは想定されていない。
 そのため、開放以外の絞り値で適正露出で撮影しようとするときはマイナスの露出補正をかける必要がある。
 当初、絞りプレビューを押せば絞込測光をしてくれるかと思ったのだが、少なくともSD1 Merrillではそのような制御はないようだ。sd Quattroではどうなのだろうか。
 忘備録として付属した説明書に記載されているズレ量を書いておく。


絞り値(F)明るさ(T)ずれ(段)露光設定(段)
1.43.2-7/30
23.2-4/3-1
2.83.5-2/3-5/3
440-7/3
5.65.60-7/3

 この露光ズレの量を見ると、F1.4〜F2.0間で明るさ(T)が変わっていない。実際にF2.0に設定した状態で絞りプレビューを動かすと、前玉側から覗いても絞りは見えない。
 これは口径食軽減のため、F1.4〜F2.0間の光束を丸々捨てているためと思われる。こうしないと周辺部でのボケで56mm APDのようにエッジが立ってしまうのだろう。この調整は35mm判のイメージサークルに最適化してあるのか、それともAPS-Cに最適化してあるのかは不明だ。
 とはいえ、このレンズの旨味が最も生きるのは開放の時であるため、滅多なことでは絞らないと思われる。この設定値を覚えておくのも面倒だ。

 そして改造後。

_SDI1271 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1277 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1283 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/25sec, ISO100, 0EV】

_SDI1287 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/250sec, ISO100, 0EV】

_SDI1288 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1293 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/400sec, ISO100, 0EV】

_SDI1295
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/320sec, ISO100, 0EV】

_SDI1301 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1306
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/500sec, ISO100, 0EV】

 この仕組みのレンズの本家本元である135mm STFも所持しているが、それと比べても遜色ない。見事にボケが柔らかくなっている。富士フイルムの56mmなどとは比べるのも失礼なクオリティだ。軸上色収差による色付きもほぼ見られない。
 しかし、この挿入されたAPDフィルタの問題点も見えた。このフィルタ、ものすごく赤い。
 市販されているNDフィルタは色への影響を排し、純粋に明るさのみを変えるという売り文句で販売されている。BBLに使われているAPDフィルタはそういった部分はあまり配慮されていないようだ。
 ベイヤーならば問題ないようだが、色の分離の悪いFoveonでは致命的な問題となる。写真全体が赤被りしてしまう。
 RAWで補正できるならばまだいいのだが、ピンク色の被写体が写っていると補正は無理だ。ピンクが白になる。
 モノクロの写真はそういう理由で補正しきれず、モノクロに逃げたものだ。日陰での写真も補正しきれないものが多い。

 どれだけ赤いかは下のスクリーンショットを見て察して欲しい。



 もはやモノクロにするしかない。

 ちなみに本家135mm STFでは下のような描写となる。

DSC03688
【SONY DSLR-A900, Minolta/Sony 135mm F2.8 [T4.5] STF, @135.0 mm F4.5, 1/800sec, ISO100, 0EV】

DSC03669
【SONY DSLR-A900, Minolta/Sony 135mm F2.8 [T4.5] STF, @135.0 mm F4.5, 1/640sec, ISO100, 0EV】

 こちらもとろけるようなボケ味、すばらしい。

 ボケ味はSTFと遜色ない。その他実用性はSTFがMFのみであるのに対して、BBLではAFが可能だ。
 しかしBBLでは絞った際の露出ズレのほか、上に挙げた赤被りがある。これは致命的だ。露出ズレ程度は補正量を覚えておけば済む話だが、赤被りはどうしようもない。
 改造元へもう少し色被りのないAPDが作れないか、問い合わせ中である。

2016/5/30追記
 BBL改造元より連絡があり、レンズの再改造を行って貰えることになった。
 再改造が完了したら再度更新を行う。

2016/06/13追記
 改造元より原因の特定と旧改造品・再改造品での比較写真を貰った。見事に赤被りが解消されていた。
 再改造品については別記事に纏める予定。

2016/6/19追記
 再改造品の記事を上げた。

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