センサーサイズが大きいカメラはボケが大きくなりやすい。これは事実だ。
 だがしかし、現在中判デジタルとして主流である44×33mmのセンサーを持つカメラでは少々事情が異なる。
 現在、現行の中判デジタル用マウントはPENTAX 645マウント、FUJIFILM Gマウント、Leica Sマウント、HASSELBLAD Xマウント・Hマウントあたりだ。このうち、ハッセルHマウント以外はすべて44×33mmのセンサーを持つボディしかない。

 さて、センサーサイズの違いがボケ量にどのような変化を及ぼすかについては過去記事でまとめている。

フォーマットサイズによるボケ量の変化 | 五海里
https://illlor2lli.blogspot.com/2016/08/blog-post.html

 この記事では3パターン計算しているが、最初に挙げている同一換算焦点距離での違いが最も実用的な指標となるため、この条件で比較しよう。
 このパターンでは過去に書いたとおり、ボケの大きさはF値を換算倍率倍すればそのまま比較が可能となる。
 では44×33mmを35mm判に換算するための倍率はいくらになるかというと
sqrt(36*24)/sqrt(44*33) = 0.77
 となる。つまり中判用レンズのF値を0.77倍すれば35mm判用レンズと直接比較ができるし、逆に35mm判用レンズのF値を0.77で割れば中判用レンズと比較できる。
 そこで、35mm判用レンズで一般的に明るいレンズと言われるF1.4は中判用でどのくらいのF値に相当するかを計算してみると、F1.8のものと同等となることがわかる。(ライカSは45×30mmのためF1.75)

 では各中判用レンズのラインナップを見てみよう。
 645マウントで最も明るいレンズはMACRO 90mm F2.8 ED AW SRや75mm F2.8など。
 GマウントではGF110mm F2 R LM WR。(非純正ならば中一光学の65mm F1.4、85mm F1.2があるが)
 Sマウントではズミクロン 100mm F2。
 Xマウントでは85mm F1.9。
 どのマウントでも純正ではF1.8を下回るレンズが存在しない。明るくてF2程度までだ。中判でのF2レンズは35mm判でのF1.6程度のボケ量となる。
 それに対して35mm判用の明るいレンズではF1.4は当たり前、ミラーレスならばF1.2もF0.95も存在している。

 中判には中判のメリットがある。しかし、ことボケ量においては実は35mm判に対してのメリットは存在しない。
 ラージフォーマット = ボケが大きい、のイメージに凝り固まっていると盲点となるが、薄い被写界深度を求めるのであれば買うべきは中判ではない。35mm判だ。