ひょんなことから安く中古が手に入った。セコニックの分光色彩照度計、C-7000。
 これは光源のスペクトル、演色評価、CIE1931、CIE1976を計測できる。このうちCIE1931とCIE1976は私はよく分かっていない。ディスプレイの色域関係の話で見たような気もする。
 とりあえず手近な光源のスペクトルを調べてみることにした。

 まずは太陽。窓ガラス越しに計測。



 窓ガラス越しであることが影響してか380nm付近の紫外線の波長は多少落ち込んでいるが、さすがの演色性だ。

 次に私が使っている日立のシーリングライト。「まなびのあかり」というモードを搭載しており、Ra92を謳っている。



 公称のRa92を超えRa93.1という計測結果になった。スペクトルの全体像を見るとまさにLEDといった形で、450nmの波長に大きなピークがある。演色評価のグラフを見るとR9が63.5と落ち込んでいるが、人工光源でこの数字ならば優秀な方だ。

 同じシーリングライトで「全灯」では以下の結果となった。



 日立のまなびのあかりを搭載したシーリングライトにおいて「全灯」とは2種類の白色LED全てを点灯するという意味であり、「まなびのあかり」ではそれに加え赤と青のLEDを追加で点灯させている。そのため「全灯」という名称だが全てのLEDが点灯しているわけではない。
 「まなびのあかり」と比較すると480nm付近と640nm付近の波長が落ちており、演色性も86.7と特に良いわけではない(ちなみに公称はRa85)。

 次に電球色LED。



 LEDによく見られる450nm近辺のピークは非常に少ない。ピークは608nmで長波長側のスペクトルが豊富かつ色温度も2500Kと低いが、R9は9.8と非常に低い。Raも82.8と芳しくなく、正確な色を得るための光源には不向きだ。

 では同じくらいの色温度だが演色性は高いと言われる白熱電球のスペクトルを見てみる。



 圧巻のRa99.1だ。今回の計測では太陽を超えてしまった。R9も96.4と非常に高い。
 個人的にはこのスペクトルで青系統のR4〜8とR12が高い(R12は文字が潰れて見えないが98.6ある)のが不思議に感じてしまうが、それは色温度2700Kという低さに現れている。演色性は高いものの色温度の低さから扱いにくい光源だ。

 次は昼光色LEDだ。



 THE・LEDのスペクトルといった風情だ。450nmに大きなピークがあり、Raは86.5とそこまで高くない。

 次は蛍光灯のスペクトルを見てみよう。



 こちらも典型的な三波長蛍光灯のスペクトルだ。こうして見ると演色性の観点から言えば蛍光灯はなかなかひどい。Raも78.9といままで登場したLED全てに負けている。高演色性を謳う製品ではLEDよりも蛍光灯のほうが演色性が高いことが多いため、通常の蛍光灯でもLEDより優秀な印象を勝手に持っていたが、その認識は改める必要がありそうだ。
 唯一LEDに勝っているかもしれない点は、ピーク波長が544nmという緑色の領域のため同じ光度ならば蛍光灯のほうが明るく感じられることがあるかもしれないというところだろうか。とはいえ実際は同じ大きさであればLEDのほうが光度は高いだろうし、消費電力も小さい。
 R9も9.0と低く、例えばトマトサラダやレアステーキなどはLED光源よりくすんで見えるかもしれない。食卓の光源にも向いているとは言い難い。ダイエットがしたいなら優れているかもしれないが。
 ちなみにLEDには450nmに大きなピークがあり、一昔前からこれを指して「ブルーライトが多く目に悪い」とする風潮があるが、かなり眉唾だ。
 ブルーライトの有害性を謳うWebページの中には「強いエネルギーを持っており、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達します」などと書いてある。バカか。網膜で光を受けずにどうやって物を見るのだ。全ての可視光は網膜まで到達しているに決まっている。ついでに言えば赤い光よりも波長が短いブルーライトのほうが角膜や水晶体で吸収される割合は高いだろう。こんなおつむがパーなことを平気で書いている時点で主張の信憑性に大きな疑義が出る。
 だいたい、一番最初に載せた太陽のスペクトルを見て欲しい。ガラス越しでもLEDなんかよりもよっぽどブルーライトや紫外線にあふれている。ブルーライトが有害ならば太陽のほうがよっぽど有害である。
 ただし、人類の歴史の中の大部分で太陽以外の光源は火くらいしかなかった。目へのダメージという観点では一笑に付すが、従来は太陽にしか含まれていなかったブルーライトを受けることによって体内時計が狂い睡眠に支障が出る可能性までは否定する気はない。
 しかし諸々のメリットを考えればもはや三波長蛍光灯を使うメリットはあまりないのではないだろうか。

 このC-7000はストロボ光の測定もできる。そのため手持ちのEF-610 SUPERとEF-630も計測した。
 まずはEF-610 SUPER。



 さすが写真撮影専用の光源である。Ra97.8と非常に演色性が高く、R9の数字も93.6と素晴らしい数字だ。400nm以下のスペクトルが低いが、このあたりはほとんど紫外線なので気にしなくていいだろう。
 しかし色温度が6500Kとかなり高めなのが少々気になる。昼白色の光源の中で追加で使うならばフィルターで色温度を少し落としたほうが良いかもしれない。

 では後継機のEF-630のスペクトルを見てみよう。



 EF-610 SUPERとほぼ変わりはない。同じSIGMAのストロボのため光源は共通なのだろう。

 今回C-7000を手に入れて手近な光源を計測してみた。こうして比較してみると蛍光灯のスペクトルが非常にスカスカなのが気になってしまった。私の家では直管蛍光灯以外のほぼ全ての灯りをLEDにしているのだが、これは正解だったようだ。
 また、予想外だったのがこのC-7000、Mac用のユーティリティソフトがないのだ。C-700やその後継であるC-800はMac用が用意されているのに、このC-7000だけ無い。なぜだ。数年ぶりにWindows機を引っ張り出すはめになってしまった。

 さて、これで光源のスペクトルや演色性を確認する術を手に入れたわけだが……正直、特に活用するあてがない。どうしよう。