SIGMAがレンズラインナップをContemporary、Art、Sportsの3種類にコンセプトを分けるSIGMA GLOBAL VISIONがスタートして6年以上が経った。
 この間にSIGMAの本気のレンズであろうArtラインの明るい単焦点レンズは以下の10本が発売された。(DCの30mm F1.4は除く)
・14mm F1.8
・20mm F1.4
・24mm F1.4
・28mm F1.4
・35mm F1.4
・40mm F1.4
・50mm F1.4
・85mm F1.4
・105mm F1.4
・135mm F1.8
 私はこの10本のレンズすべてを購入し、所有している。
 これらのArtレンズは評価も高く、明るいレンズを購入したいと思った場合は有効な候補として挙がるだろう。その際、どのレンズを買うかは一般的な写真趣味者ならば「欲しい焦点距離のもの」になるだろうが、私のようなカメラ趣味のものにとっては「描写のいいもの」になる。
 そこでこれらのレンズを私の主観によるおすすめ順に並べ、それぞれ所感を述べる。購入の一助としてもらいたい。個別のレビュー記事を書いているレンズに関してはレンズ名にリンクを張っておく。
(なお、文中の「四隅」はAPS-CまたはAPS-Hでの隅のことであり、35mm判の隅は評価できない)


・1位 105mm F1.4
_SDI2320

 このレンズはArt単焦点という括りの中だけではなく、私の所有する全てのレンズの中で最も好きなレンズだ。ファインダーを覗いただけで感動したレンズはこれしかない。
 解像力は開放から素晴らしい上に1段絞ると四隅まで完璧になる。色収差はほぼ存在しない。ボケ味は素晴らしくSTFに迫るのではないかと思うクオリティ。唯一の弱点と思われる大きさ重さも、この描写の前には大した問題ではないと思わせるだけのパワーがある。
 描写に関しては欠点が見つからない。このレンズは被写体を問わずおすすめできる。

・2位 40mm F1.4
_DQH1028

 「ミニ105mm」という印象。このレンズも解像力は開放から抜群で、軸上色収差も少なく、ボケ味もいい。
 しかし重箱の隅をつつくと、105mmに比べると上に挙げたそれぞれにおいてほんの少しずつ遅れを取っているため2位とした。もちろん一般的なレンズに比べると非常に優れており、単に105mmが優秀すぎるだけなのだが。
 また、「ミニ」とは言ったが大きさはミニではない。今回取り上げるラインナップでは105mmに次いで2番目に重いのだ。135mmや85mmよりも重く、標準域のレンズとしては異常と言っていい。しかしこのレンズもそれだけの重さの価値はある。
 もう一点、40mmという焦点距離についても一押しとできるだけの理由がある。詳細は40mmのレビュー記事を読んでもらいたいが、私は標準レンズとしては50mmよりも優れていると考える。なぜ他社が40mmをラインナップしないのか不思議なくらいだ。この画角がほしいというだけでも選ぶ価値はあるだろう。

・3位 85mm F1.4
_DQH0173

 3位には85mmを選んだ。しかし、この3位から6位まではどれも同じくらい優れているレンズであり全て同率3位としたいくらいなので、この順位に深い意味はない。単に私の画角の好みと考えてもらっていい。
 この85mmもまた、大きな欠点が見つからないレンズである。私の大嫌いな軸上色収差も105mmには及ばないもののよく抑えられており、中望遠という画角もあって四隅までかっちりと写る。
 弱点としては、逆光に弱い。特にFoveon機との組み合わせでは見苦しい緑フレアが発生する。これは85mmや135mmまでの世代ではどれも似た傾向だ。

・4位 135mm F1.8
_DQH0656

 解像力では85mmを上回る。また、レンズ構成に非球面を使っていないのもこのレンズの特徴だ。私はあまり気にしないが、非球面を嫌っている人も多い。とはいえ、嫌う理由として考えられる玉ねぎボケの発生はこの85mmや135mm以降の世代では発生していないSONYもGMレンズで玉ねぎボケが発生しないことを宣伝しているが、SIGMAのレンズも同じレベルに立っている。個人的にはなぜこれをSONYと同じように宣伝していないのか不思議である。
 さて、このレンズの解像力に関してはこの記事を見てもらうのがわかりやすい。記事中では特に触れていないが、この等倍切り出しは135mmの開放でこの解像なのだ。もちろん、ボディがFoveon機であることも大きいが。

・5位 14mm F1.8
_DQH0669

 この世代のレンズからArtが逆光に強くなった印象がある。特にこの14mmは異様に逆光耐性が優れている。Foveon機では避けられないのかと思っていた緑フレアだが、このレンズではどれだけ意地悪な光線条件を試そうが緑フレアを出すことはできなかった。
 解像力も素晴らしく、14mmという焦点距離にもかかわらず四隅での像の流れなどは見て取れない。ボケ像も放射状にも同心円状にも流れはなく、非点収差が高いレベルで補正されていることがわかる。また、歪曲収差も非常に少ない。

・6位 28mm F1.4
_DQH1044

 Art単焦点レンズの中で最も新しいレンズとなる。
 6位という番付としたのだが、正直に言ってこのレンズは印象が薄い。というのも、これまで挙げたArtレンズの優秀さからくる期待に十分に応えてくれ、目立った欠点も見つからないからだ。優れているに決まっているものがそのとおり優れていた、という贅沢な理由であまり印象に残らなかったのだ。
 このレンズの評価は今までの繰り返しになってしまう。解像力は高く、軸上色収差は少なく、ボケ味もなかなか。

・7位 50mm F1.4
_SDI9852

 さて、「3位から6位はほぼ同率3位」と書いた通り、この7位からは今までとは少し違った評価となる。
 この50mm、発売は2014年4月である。すでに発売から5年。正直に言うと昨今のArtレンズのクオリティから比べるとすでに世代が違っている。もちろん描写は優秀であるしまだまだ一線級で使えるレンズであることは間違いなく、EXの50mmと比べると遥かに進化してはいるのだが、最新のArtが並ぶこのラインナップ内で順位をつけるとこの位置となってしまう。

・8位 20mm F1.4
_SDI0047

 20mmがこの位置となる理由は14mmの存在が大きい。14mmは逆光に強く像の流れもないのだが、20mmは周辺部の描写はイマイチでボケも条件よっては流れ、前ボケは二線気味だ。逆光耐性も14mmの強さに比べると劣る。
 14mmがあるならばいらないのでは……となってしまうのがこのレンズだ。あまり売れてないらしいレンズにこのようなことを言うのも悪い気がするが、20mmよりは14mmを買ったほうが幸せになれるだろう。

・9位 35mm F1.4
_DQH0598

 SIGMAがレンズラインナップを3種類に分けるSGVを発表した際、最初に発表されたのがこの35mmだ。発売は2012年11月。すでに6年以上前のレンズとなる。前項にも書いたとおり、すでに世代が違う。
 135mmの項で述べたが、85mmの世代以降では非球面による玉ねぎボケが発生していない。裏を返せばそれ以前のレンズでは非球面の玉ねぎボケがあるということだ。この35mmも例外ではない。(もしかしたら最近製造されたものであれば玉ねぎボケはないのかもしれない?)
 とは言え、定評あるArtレンズの一角であることには変わりはない。35mm(と24mm)は665gというArtレンズの中で最も軽量なレンズでもあり、その点だけでも価値はあるだろう。

・10位 24mm F1.4
_DQH0181

 SIGMAには悪いが、SAマウントでなければ他の選択肢を選んだほうがいい。解像力は28mmに全く及ばず、ボケ味が悪く二線ボケ・玉ねぎボケがある。軽いことしか利点がないのではと思ってしまうが、その軽さも「Artレンズの中では」というものだ。このランキングを作るにあたって中間の順位は少々悩んだが、1位と10位は一切悩まず決まっていた。このレンズはおすすめしない。

 各レンズへの思いを正直に語った結果7位以降が貶してばかりになったが、その分6位までのレンズの素晴らしさも正直な感想であることはわかってもらえるだろう。特に1位の105mmは特筆して優秀であり、2位以降とは格が2つ違っていると感じている。
 この中でおすすめなのはもちろんぶっちぎりで105mmなのだが、6位までのレンズはどれを買っても満足できるだろう。大きさと重さが許すのなら、だが。

 SIGMAのArtレンズに105mm F1.4と135mm F1.8というレンズがある。
 この二つの入射瞳径を比較してみると105/1.4 = 135/1.8 = 75mmとなり、どちらも入射瞳径は同じであることがわかる。
 入射瞳径はボケの大きさに影響することは有名だが、それではこの同じ入射瞳径を持つレンズではどちらのほうがよりボケるのか。計算により確認してみた。

 過去にフォーマットサイズによるボケ量の違いを計算した際の数式を流用する。

フォーマットサイズによるボケ量の変化 | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.com/2016/08/blog-post.html

後方被写界深度 = (R^2*δ*F)/(f^2-R*δ*F)
R : 被写体までの距離[mm]
δ : 許容錯乱円直径[mm]
f : レンズ焦点距離[mm] 
 この式は以下のように読み替えることができる。 
δ = d*f^2/(R*F*(R+d))
δ : 像面上のボケの大きさ(後ボケの場合)[mm]
R : 被写体までの距離[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]
d : ピント位置からボケ光源までの距離[mm]

 この式に条件を付け加えていこう。

 まずは入射瞳径が同一であるという条件のため、F値を入射瞳径に置き換える。

F = f/D …①
D : 入射瞳径[mm]

δ = d*f^2*D/(R*f*(R+d))
  = d*f*D/(R*(R+d)) …②

 次に焦点距離が変わっても被写体の大きさが変わらないよう、被写体までの距離を置き換える。計算を簡単にするため35mm判前提で対角線ではなく横方向の長さで考える。

A/R = 36/f
R = A*f/36 …③

A : 横画界[mm](ピント面にて写る範囲の横方向の長さ)

 この式を②に代入し、

δ = d*f*D*36/(A*f*((A*f/36)+d))
  = d*D*36/(A*((A*f/36)+d)) …④

 ここで定数をすべてまとめる。
d(ピント位置からボケ光源までの距離)
D(入射瞳径)
A(横画界)
 が撮影条件と入射瞳径が同一である条件により定数となるため、それぞれ定数の項をA・B・Cに置き換えると

δ = A/(B*f+C) …⑤

 となる。
 ⑤を見ると入射瞳径が同じ条件ならば、焦点距離が短いほど(F値が小さいほど)ボケが大きくなることがわかる。冒頭の例で言えば135mm F1.8よりも105mm F1.4のほうが、他社レンズで言えば400mm F4よりも200mm F2のほうがボケが大きい。
 (ちなみに被写体までの距離を変えずに比較すると、撮影される写真が全く違うものになるが焦点距離が長いほうがボケが大きくなる)

 それでは具体的な数字で計算してみよう。

カメラの被写界深度の計算 - 高精度計算サイト
https://keisan.casio.jp/exec/system/1378344145

 ここで135mm F1.8、被写体までの距離10mのパターンでは被写界深度が593.11mm。105mm F1.4、距離は同一画界となるよう7.77m(105/135*10)では461.31mm。
 焦点距離が短い105mmのほうが被写界深度が薄い(ボケが大きい)ことがわかる。

 実際に105mmを使用した際は135mmよりもピントがシビアだった印象があったが、計算上その印象は正しかったことが確認できた。

 SIGMAのArtレンズ最新作、28mmを入手。
 外観はいつもと変わらないArtレンズだ。2018年のフォトキナ発表分より追加されたロック付きフードはこのレンズにもついている。今後標準となるのだろう。


 28mmという焦点距離だが、これは35mm判でもAPS-Cでも有用な焦点距離だ。
 35mm判では多くのスマートフォンと同じ焦点距離となり、現代で最も使われるカメラと同じ感覚で撮影できる。
 APS-Cでは換算42mmとなり、撮像面の対角線の長さとほぼ等しい。PENTAXのFA43mmと同じ思想の標準レンズとして運用できる。前回40mmの記事にも記載したが、50mmという焦点距離を標準としては長いと感じる人にとっては便利な焦点距離となる。
 とはいえsdQHでは換算37mmになるため、35mm単焦点代わりになるのだが。

 大きさはArtレンズとしては標準的だろう。例によって世間一般的には大きく重いと言われるのだろうが、105mmや40mmと比べれば小さく軽い。

 以下、作例。

_DQH1042
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/1600sec, ISO100】

_DQH1041
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/4000sec, ISO100】

_DQH1045
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/1250sec, ISO100】

_DQH1044
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100】

_DQH1049
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/2500sec, ISO100】

_DQH1053
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/640sec, ISO100】

_DQH1043
【sd Quattro H, 28mm F1.4 DG HSM | Art 019, @28.0 mm F1.4, 1/400sec, ISO100】

 作例は全てF1.4開放だ。写りはさすが最近のArt単焦点と言える。MTFではメリディオナルよりもサジタルがわずかに落ちているが、これも105mmや40mmと同じ思想でほんの僅か絞ったときに改善しやすい収差を残すバランス取りの結果と思われる。
 ピント面の描写はさすがのArtだ。しかし軸上色収差が目立ちやすいFoveonセンサではボケに緑の色付きが見られる。とは言え等倍で確認しなければそこまで目立ちはしない。雪景色という最悪に近い条件でこれならば優秀だろう。また、ベイヤーならばここまで軸上色収差は目立ってこないはずだ。
 逆光耐性は14mmには全く敵わないものの、SIGMAのレンズとしてはいい方だと思われる。Foveonでは逆光時に緑色のフレアが発生するのだが、その量が他のレンズに比べると少ない印象だ。5枚目の写真は左上にフレアが出ているが、これはSPPのフリンジ除去で緑色を消している。フリンジ除去をしなかった場合は下の写真となる。


 まあ、緑フレアの発生量が少ないことはいいことではあるが、どれだけ少なかろうが緑フレアが発生する時点で見苦しいためFoveon使いには関係ないかもしれない。この写真のように他に緑色の要素がない場合はSPPでもどうにかできるが、そうでない場合に補正しようとするならばPhotoshopなどを使用するしかないだろう。あとはあえて言うならばボケの描写は105mmや40mmと比べて今ひとつだろうか。
 悪い部分ばかり述べたが、他の解像力などはそつなく高いレベルとなっている。28mmのレンズが欲しい場合はいい選択肢となるだろう。

 SIGMAから40mm F1.4が発売された。
 今回のフォトキナで発表されたレンズの中で一番期待していたものだ。発表時点からその重さ大きさ、レンズ構成、MTF曲線を見てこれは凄まじいレンズになると確信していた。CP+で発表され、実際に凄まじいレンズだった105mm F1.4と同じ雰囲気を纏っていたのだ。

 まずはレンズ外観だが、今回のフォトキナ発表分のレンズからハードウェアに大きな変更がひとつあった。レンズフードだ。


 フードにボタンが付き、ロックが可能になった。これによりフード紛失のリスクが大幅に減り、また花形フードでロック位置まで回さなかったことによるケラレのリスクも減った。個人的にはそのどちらも経験していないが……
 SONYの135mm STFのようにロック感が皆無なフードもある中、こうした細かい部分にも配慮されているのは嬉しいところだ。
 このボタンはフード内側にある爪に連動しており、ボタンを押すと爪が引っ込む。


 このロック機構は特殊ネジ5本でネジ止めされており、コストが掛かっていそうだが高級感がある。

 このレンズの焦点距離40mmであるが、中には中途半端に感じる人もいると思う。これはSIGMAのレンズとしては初のシネレンズ用として開発されたことに起因しており、シネレンズとしては40mmは一般的だかららしい。
 しかし、スチルにおいても40mmという焦点距離は有用ではないだろうか。
 私は常々「標準レンズ = 50mm」の図式に疑問を持っていた。50mm、狭くないか?
 PENTAXからはFA43mmというレンズが発売されている。これは撮像面対角線長が標準レンズの焦点距離であるという考え方からきているもので、35mm判の対角線長43mmを焦点距離に持つこのレンズは「真の意味での標準レンズ」と謳われている。
 また、写真はトリミングにより換算焦点距離を伸ばすことは簡単であるが、逆に換算焦点距離を縮める方向への加工はどうやったってできない。物理的に不可能である。
 そう考えれば「対角線長 = 標準レンズ焦点距離」の考え方から43mmを50mmに丸めるのは意味不明。丸めるのであれば40mmにすべきだろう。
 以上よりこの40mmという焦点距離こそ本来「標準レンズ」として広まっていなければならなかったのではないだろうか。私はカメラの歴史については無知なためなぜ50mmが標準になっているのか知らないが……
 と、書いたはいいが現在SAマウントFoveon機に35mm判が存在しない。このレンズは来年発売する予定の35mm判Foveonで標準レンズとして使うのが楽しみだ。
(余談だが、FA43mmを「真の意味での標準」とまで謳うPENTAXが、つい最近まで自社のカメラがAPS-CだけだったのにDA28mmを出していないのも意味がわからないと思っている)

 もう一点、さすがにこれに触れないわけにはいかないだろう。大きさと重さである。
 本レンズはフィルター径φ82、重さが1200gだ。なんと、Artの明るい単焦点レンズの中で105mmに次いで二番目に重い。85mm F1.4と135mm F1.8ですら1130gである。発売当時、紹介するメディア全てが大きい、重いと言っていた50mmでも815gである。標準域のレンズとしては破格の大きさ、重さであろう。


 この写真、左から105mm、40mm、85mmだ。
 ちょっとした望遠のような佇まいである。105mmを別に重くないと言った私でも認めざるを得ない。標準レンズとしては、重い。

 では、その重さと引き換えに得られる写りはどのようなものだろうか。
 以下に作例を載せる。

_DQH1012
【sd Quattro H, 40mm F1.4 DG HSM | Art 018, @40.0 mm F2.8, 1/800sec, ISO100】

_DQH1021
【sd Quattro H, 40mm F1.4 DG HSM | Art 018, @40.0 mm F1.4, 1/125sec, ISO100】

_DQH1026
【sd Quattro H, 40mm F1.4 DG HSM | Art 018, @40.0 mm F1.4, 1/500sec, ISO100】

_DQH1028
【sd Quattro H, 40mm F1.4 DG HSM | Art 018, @40.0 mm F2.8, 1/60sec, ISO100】

_DQH1034
【sd Quattro H, 40mm F1.4 DG HSM | Art 018, @40.0 mm F2.0, 1/500sec, ISO100】

_DQH1037
【sd Quattro H, 40mm F1.4 DG HSM | Art 018, @40.0 mm F2.0, 1/400sec, ISO100】

 冒頭に105mmと同じ雰囲気を感じたと書いたが、まさにそのとおり。5ヶ月前に105mmの鮮烈な写りに感動したばかりであったが、その感動をもう一度、であった。
 開放から切れ味のあるピント面、にもかかわらず十分に良好なボケ。開放でも素晴らしい解像力は1段ほど絞ることで画面全域に渡って均質になり完璧と言っていい。軸上色収差も非常に少なく三枚目中央の玉ボケに多少見られる程度だ。なおこの軸上色収差はFoveonで目立ちやすく現像時にフリンジ除去を行っていないため、ベイヤーでの撮影や現像処理によってはほぼ現れないだろう。この写りは105mm F1.4がそのまま40mmになったかのようだ。
 あえて弱点をあげるのならば、ボケ味は105mmにはかなわないだろうか。
 しかし、1200gを持ち運ぶだけの価値はある。そもそも40mmという焦点距離で考えれば重いレンズだが、持ち運びはともかく構えて撮るときには1200g程度苦になるはずがない。
 今持ち歩く単焦点を3本だけ選べというならば14mm、40mm、105mmの3本を選ぶ。この3本があれば何でも撮れそうだ。
©Lマウントアライアンス

 フルサイズミラーレス旋風吹き荒れる2018年。ライカ、パナソニック、シグマの3社はフォトキナ2018にて『Lマウントアライアンス』を発表した。
 これはライカがすでに販売しているライカSL、TL、TL2、CLに採用されているLマウントを、ライセンスが付与されたパナソニック・シグマも共通して利用し、各社のカメラ・レンズを相互に利用できるものだ。仕組みとしてはマイクロフォーサーズ規格と似たものとなる。

 さて、我らがSIGMAはこのLマウントアライアンスへの参加でどのような動きを取るか。フォトキナにて今後の方針が発表された。
・2019年に35mm判Foveon機をLマウントで出す。
・今後SAマウント機の開発は行わない。
・SAマウントレンズに関しては当面の間継続して販売する。
・SA-L、EF-Lのマウントアダプタを開発し、Lマウントカメラと同時に発売する。

 1993年発売のSA-300から続いたSAマウント機25年の歴史が、幕を下ろした。

 正直に言えば、寂しさがある。ショートフランジバックのLマウントしか採用しないということは、一眼レフは今後出る可能性がゼロということだからだ。
 しかしカメラの動作が全体的に遅いFoveon機にとってミラーレス化というのは正統進化である。さらにsdQがミラーレス化した時点でマウント変更も必然だった。

 DMC-G1が登場して10年。35mm判も各社出揃い全盛期を迎えるミラーレスでも、いまだに一眼レフがアドバンテージを持つ部分は存在する。遅延ゼロの光学ファインダーとAF速度だ。
 ファインダーは言わずもがな。AF速度に関しては位相差のみで合わせる関係上、精度を犠牲にしても速度は速い(ミラーレスの像面位相差でもコントラスト式の追い込みを省けば似たような速度になる可能性はある)。
 しかし、それらの利点がどこで生かされるかといえば、主に動体撮影だ。
 ではSIGMA製カメラで動体撮影を行うか?
 SAマウント機において最速の連写速度を持つSD1でも5枚/秒(画質設定を下げれば6枚/秒)であり、7枚撮影すれば書き込み完了までに1分半を要する。そもそもAFが弱くAF-Cで撮影してもピンボケ写真を量産するばかり。MFで動体を追え、少ない枚数で上がりを得られる特殊な技能を持っていなければ使えるものではない。それならばEOS Kissでも持ってきたほうが歩留まりがいいだろう。
 つまり、SIGMA製の一眼レフにおいては「動体に強い」というメリットはそもそも存在していない。ならば光学ファインダーを捨て去ることにデメリットはない。
 sdQが光学ファインダーを捨てて失ったものはほぼなく、代わりに得たものはSD1では夢のまた夢だった完璧に近いピント精度だ。私はsdQ発表時点では否定的だったが、Foveon機にとってミラーレスという道を進むことは今考えれば当然であった。

 さて、ではミラーレス化が必然であったFoveon機では、フランジバックの長いSAマウントを継続して採用する理由があるか?
 まったくない。マウント変更も当然の選択である。

 改めてSAマウントというものを考えてみると、SIGMAにとってビジネス的にはお荷物であった可能性が高い。
 汎用性がゼロで数がろくに出ない自社専用マウントでも、ラインナップに乗せるということは製造と在庫管理に要するコストがどうしてもかかってくる。
 SGVのマウント交換サービスとMC-11の登場、さらにsdQの初値8万円という価格で販売本数は多少は上向いただろう。しかしコスト面だけで見ればデメリットのほうが大きかったのではないか。
 しかし、それでも、たとえAマウントを省こうと、たとえKマウントをやめようと、SAマウントだけはすべてのレンズでラインナップしてくれた。
 これはお金の数字だけを見ているならばできることではない。現にAマウントもKマウントももう出ていない。SAマウントがKマウントより売れていたなどとは思えない。
 今現在の豊富なSAマウントレンズラインナップは、ひとえに自社カメラを購入しているユーザへのSIGMAの誠意だろう。
 やろうと思うのであれば「ContemporaryではSAマウントを出さない」「古いレンズのSAマウントはディスコンにする」などの選択肢もあった。
 しかし、今現在SAマウントはSIGMAの全レンズを欠けることなく網羅している。
 こうして考えるとSIGMAには感謝しかない。
 いままでSAマウントを維持してくれたSIGMAにも、素晴らしい写真体験を与えてくれたSAマウント自身にも、ありがとうとお疲れ様を伝えたい。
(とはいえ、SAマウントレンズの製造はまだしばらく続くが……)

 SIGMAは次の選択肢にLマウントを選んだ。数という基準ではライカもSIGMAも弱いが、パナソニックのカメラならば数は出るだろう。Lマウントアライアンスがどこまで盛り上がるかは今現在未知数だが、今後SIGMAは自社専用の数が出ないマウントを維持するという苦しみからは解放される。
 これもひとえにSIGMAレンズの評価の高さがなしえたものだろう。プレスリリースではライカより「光学設計とレンズ製造の分野では、確固たる地位を築いて」いると評価されている。
 SA-300を発売した1993年には、電子接点を備えたKマウントを利用することができず、数多ある安価な互換レンズメーカーの一つとして他社と協業することもできず、自社専用マウントという茨の道を進むしかなかったゆえのSAマウントだったのではないかと想像する。
 現在、特にSGV以降のレンズの高評価によって良いパートナーに恵まれることができた。
 SIGMA製カメラの大きな転換点として、新たな門出を素直に祝福したい。

 ここからは新製品の話をしよう。
 来年、SIGMAから35mm判Foveon機が発売される。現時点では本機に関する情報は全く無い。
 Foveonの35mm判化については懸念が二つある。一つはダストプロテクタだ。
 sdQHの実物を見ればわかるが、SAマウント自体はフィルム時代からのマウントであるため当然35mm判をカバーしているものの、デジタルから追加されたIRカットを兼ねたダストプロテクタの枠を考慮するとマウント径が非常に小さくなる。現在のAPS-Hはプロテクタ内径を考えると限界ギリギリの大きさだろう。このプロテクタを続けるのならば、少なくともSAマウントでは35mm判を採用するのは不可能と思っていた。
 ではLマウントではどうか。おそらく、不可能に変わりはない。取外しを可能にするためにバヨネットの爪内径より小さく、数mmの枠を持ったプロテクタを配置するとEマウントよりも実質の内径が小さくなるだろう。また、ショートフランジバックであるがゆえに厚みのあるプロテクタを配置できない可能性があり、配置できてもレンズのバックフォーカスが限られてしまう。Lマウントの仕様は公開されていないため確認できないが、20mmのフランジバックに縛られずバックフォーカスを極限まで縮める設計を許容している場合はプロテクタの配置は不可能だ。
 そのため、おそらくIRカットはセンサに積層することになるのではないだろうか。その場合のダスト対策はどうなるかは不明だ。可能性は非常に低いが、ボディ内手ぶれ補正を搭載してダスト対策を加えてくれるならば最高なのだが。ライカのカメラにボディ内手ぶれ補正がないため望みは薄く、Lマウントの規格がボディ内手ぶれ補正を認めているかもわからない。
 二つ目は35mm判センサの膨大なデータ量をどうするか。山木社長は過去、「35mm判のFoveonは実現可能だが、中判のような使い勝手になる」と語っている。これはデータの処理時間を指したものではないかと思われる。
 SD1からsdQ/sdQHに変わって書き込み時間がかなり短くなったのは非常に快適だったため、もう一度SD1の水準まで戻るようなことはできれば避けてもらいたいものだ。
 データ量にも関連することだが、Foveonセンサの構造がどうなるかも不明である。Merrillまでの1:1:1構造へ戻ることはおそらくなく、Quattroの4:1:1のままなのではないかと考えている。
 もう一点、Foveonを他社と共通のマウントにすることへの懸念もある。過去にも記事にしている周辺部の色被りである。
 とはいえ、これはQuattroでは非常に少なくなったため補正は容易なのかもしれない。
 しかしオールドレンズ母艦としての運用では、レンズ情報が無いため流石に補正は不可能だろう。
 ひとつ馴染めるかどうか未だにわからないものがある。私がミラーレスを嫌っている二つの理由のうち片方のEVFについては流石に慣れた。しかし、フォーカスバイワイヤはArt70mmを使っていて苛立ちしか感じない。ミラーレスネイティブとなるのならばおそらくレンズはフォーカスバイワイヤとなるのだろう。これだけは耐えられるかわからない……

 レンズに関しては28mm F1.4と40mm F1.4は確実に購入する。
 特に40mmは非常に期待が高い。105mm F1.4の感動をもう一度味わえるのではないかとわくわくしている。
 40mmはSIGMA製レンズとしては初めてシネレンズとしての使用を前提として開発されている。そのためフォーカスブリージングが少ない可能性がある。スチルでは特に関係ない性能だが。
 また、今回のレンズからフードがロック付きとなったようだ。どのようなものかは実物を触るまでわからない。早く実物を触ってみたいものだ。
 28mmも40mmほどではないものの非常に高性能を予想させるMTFだ。サジタルがメリディオナルよりも低めだが、これは105mmと同様に絞ったときに改善しやすいサジタルの収差を残すというバランス取りをした結果ではないだろうか。おそらく1段ほど絞れば画面全域で均質な描写を得られるものと思われる。

 SAマウント機の開発が行われないという情報は、レフ機を求めていた私には残念な情報ではあったが、はっきりと明言してくれているだけありがたい。E-5はいつの間にか販売が終了しており、Qマウントマクロは未だ発売されない。そのようになんの音沙汰もなくフェードアウトする製品もあるなか、SAマウントの今後についてアナウンスするのは非常に誠実な対応をしてくれている。

 さて、ほかにもこまごまとした言いたいことはあるのだが、このあたりにしておこう。
 SIGMAはまだまだ面白いものを見せてくれる。こんなに見ていて楽しいメーカーはない。

 私はメガネがないと生活がままならないド近眼である。乱視は殆どないのだが、右目が-8.25D、左目が-7.50Dという度数のメガネを使用している。
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【追記】
更に度数は進み、乱視も入ってきた。
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 ところで、メガネも光学製品である。そのためカメラオタクが興味を持ち、こだわりを持ち、複数本持つのは自然の摂理と言える。

 現在所有しているメガネは以下の通り。

・ZEISS プンクタール ガラス球面 n=1.60, v=41.7 (999.9)
・伊藤光学 ガラス球面 n=1.52, v=58 (GOLD&WOOD)
・ホッタレンズ(TSL) 1.7AE1-SV ガラス非球面 n=1.70, v=52 (Amiparis)
・東海光学 ベルーナJX-CVf プラスチックオーダーメイド両面非球面 n=1.70, v=36 (999.9)
・TALEX プラスチック偏光球面 n=忘れた (ZEAL OPTICS)
・忘れた プラスチック球面 n=忘れた (Line Art)

 nは屈折率、vはアッベ数を表す。アッベ数の意味については後述。

 この内メインで使用しているのはZEISSのプンクタール1.60だ。また、この他にHOYAのガラス球面、999.9のニコンOEMプラスチック両面非球面を持っていたがレンズ交換により現在はない。低屈折率のプラスチック調光レンズも持っていたが、こちらは現在諸事情によりフレームごと持っていない。
 これ以外にも小学生の頃からさまざまなメガネを使い続けてきた。その経験からベストなメガネレンズ選びについて私見を述べたい。


  • 「いいレンズ」とは?

 材質や収差の知識がない人は、レンズを選ぶときはメガネ屋が提示する選択肢から選ぶことがほとんどだろう。その場合に提示されるものは
1. 材質はプラスチックのみ。
2. グレードの選択は屈折率の高低で、高屈折率のほうが高い。
3. 設計は球面か非球面か両面非球面か。非球面・両面非球面のほうが高い。
4. 耐傷・防曇・ブルーライトカットなどの機能性コーティングの有無。
 これら4種類の組み合わせくらいになる。レンズメーカやアッベ数などは特に知らされないことが多い。
 知識がない人がこれらの情報から「いいレンズ」を選ぼうと思うと、評価基準は値段くらいしかない。そうなると「高屈折率・両面非球面・機能性コーティング付き」が最高のレンズとなる。
 さて、そのレンズは本当に「いいレンズ」なのだろうか? 結論から言うと、少なくとも私は絶対にそのレンズは選ばない(遊びで作る場合を除く)。
 ここで「いいレンズ」とはなにか、定義を決めておく。ここで言う「いいレンズ」とは、収差が少なく視界に違和感を生じないレンズだ。他者からの見た目は評価に含まない。
 上述の高いレンズをその基準で見た場合、「いいレンズ」と評価することはできない。では高いお金を出したぶんは何に反映されているのか? 答えは「薄さ」だけだ。
 一般的なメガネ屋では薄さ至上主義のような説明をされることが多く、視界の良好さについては説明が難しく個人の感じ方にも差が大きいこともあって触れられることは皆無と言っていい。そのため、この記事で「いいレンズ」の条件を説明しよう。


  • プラスチックか、ガラスか?

 現代のメガネレンズは99%がプラスチック製だ。しかしガラスという選択肢も一度考慮に入れてみてほしい。
 ガラスのメリットは
・耐傷性が高い。(コーティングにもよる)
・透過率が高い。
・アッベ数が高い。(高屈折率の場合)
・屈折率が高い。
・枠入れ時の歪みがほぼない。
・耐熱性が高い。
 などがある。
 透過率の高さはメリットがわかりにくいかもしれないが、わずかでも明るければ瞳孔が小さくなることで収差の影響が減り、視界の品質が良くなる。また、プラスチックレンズの場合はレンズを枠に固定するときの力でレンズが僅かに歪んで度数にムラができてしまうのだが、ガラスの場合はそれがない。
 私は視界の良好さを追求するならばガラスをおすすめする。

 とはいえ、当然デメリットもある。
・衝撃で破損の危険がある。
・フレームの選択肢が少ない。(ハーフリム・ツーポイント等が不可)
・重い。
・非球面設計がめったにない。
・売ってない店も多い。
 このうちフレームの選択肢と重さは人によっては致命的にもなる。またスポーツに使用するならば破損時のことを考えて避けたほうが無難だ。
 そのため、ここは好みで選んでしまっても構わない。


  • 屈折率は高いほうがいいのか?

 ここまでの文章を読んでもらったならば高屈折率は良くないという結論になることは分かると思う。その理由を説明しよう。
 屈折率を高くして得られるメリットを列挙すると
・レンズが薄くなる。
・ごくわずかだけレンズが軽くなる(ことが多い)。
 以上だ。

 ではデメリットの方を挙げると
・アッベ数が低くなる。
・場合によってはごくわずかだけレンズが重くなる。
・値段が高くなる。
 まずはアッベ数とはなにか説明しよう。簡単に説明するとアッベ数とは色収差の出にくさだ。一般的に屈折率が低いほどアッベ数は高くなり、数字が高いほど色収差が少ない。一般的なメガネ用レンズでは59が最高、30が最低となる。(私の所有メガネのうちホッタレンズの1.7AE1-SVが屈折率1.70でアッベ数52を確保しているのは例外中の例外なので参考にしてはいけない)
 このブログを読むカメラオタクならば色収差(この場合倍率色収差)とはどういうものか知っていると思うが、念のために簡単な説明をするとレンズの端の方で白黒の境界部を見た際に赤や青の色にじみが見えることを言う。
 私の個人的な感覚ではアッベ数42あれば色収差が気になることは少なく、それ以上のアッベ数52、58では42のときと大きな差は感じない。逆にアッベ数36では色収差が大きすぎて常用する気にならない。車の運転中にサイドミラーを見たときなんかは低アッベ数では気になって仕方がない。このあたりは個人の感覚によって許容範囲が変わる。36でも気にならない人はいるだろう。
 また、色収差が発生すると解像力も低下する。これはSIGMAの105/1.4が85/1.4に比べ色収差を改善したことでMTFも大きく向上したことからも分かるだろう。
 次にレンズの重さについて。一般的には高屈折率でレンズが薄くなれば無条件に軽くなると思われているが、それは不正確だ。というのも、屈折率が高くなると比重も高くなってしまうためである。例として東海光学のプラスチック素材でn=1.60と1.76の比重を比較すると、1.30と1.49となっている。つまり高屈折率レンズを使用することによって体積が86%以下まで薄くならなければ、逆に重くなってしまうということだ。
 ここでフレームのレンズ幅が小さく、度数も低い近視用メガネを考える。レンズ中心部は0.8〜1.5mm程度の厚みが必要で、レンズ幅が小さければ体積に一番差が出る周辺部は使われず、度数が低ければ厚みの差も非常に小さくなる。この条件では体積86%以下を達成できない組み合わせも稀にだが発生する。また、重くなるとまではいかずとも期待したほどは軽くならないことは分かるだろう。
 値段に関しては言わずもがな。高い金を払ってろくなメリットもなく色収差のデメリットを買いたいか? 私はゴメンだ。


  • 非球面は見え方が良い?

【追記】
 以下の文章は球面の補正についての説明と体感について書いており、乱視の補正が入ったレンズについてはこの限りではない可能性がある。

 メガネ屋でSEIKOが作っている球面と非球面の比較用什器を見たことがある人は多いと思う。球面レンズでは糸巻き型の歪曲収差が大きく見え、周辺部の像が流れているようなやつだ。ついでに「はっきり見える範囲が非球面のほうが広い」と書いてあったりする。
 率直に言うが、あれは詐欺だ。
 まず球面と非球面の比較だが、あれは非常に深いカーブを持ったレンズを凸面側から離れて見させている。実際のメガネの装用環境では浅いカーブのレンズを凹面側から目のすぐ近く(一般的に角膜頂点間距離12mm)で見ている。これだけ条件が違えばなんの参考にもならないに決まっている。実際に球面レンズのメガネを使っている人なら分かると思うが、球面でもあれほどの歪曲が発生することはない。そもそも、アレは糸巻き型歪曲が出ているが近視用メガネで出るのは樽型歪曲だ。
 また、非球面のほうが広い範囲ではっきり見えるという広告だが、それも嘘である。正確に言えば「球面・非球面以外の全ての条件を同一に揃えれば正しい」と言えるのだが、そんな設計をするメーカはない。
 では非球面とは何をしているのか? 答えはまーた「薄さ」だ。
 同一度数でメニスカス凹レンズを薄くするにはベースカーブ(対物側・凸面のカーブ)を浅くすればいい。ただし単に浅くするだけでは非点収差が増加し、周辺像質が急激に悪化する(この辺は超広角レンズに出目金が多い理由と同じ)。非球面はその悪化した非点収差を球面レンズと同等レベルまで戻すという役割を担っているのだ。
 つまりまるで視界を良くする技術かのように宣伝されている非球面だが、その実はレンズを薄くするためだけの技術なのだ(東海光学のベルーナMUクリアリータイプやCVfはそうとも言い切れないが)。
 ちなみに実際の歪曲収差についてだが、手元のZEISSプンクタール球面、ホッタレンズ1.7AE1-SV非球面、東海光学JX-CVf両面非球面で比較するとプンクタール球面が一番少なく、東海光学の両面非球面が一番大きい。以前持っていたニコンの両面非球面も樽型歪曲が非常に大きかったので、非球面で歪曲が小さいという宣伝文句も果たして信用できるのだろうか。これに関しては私の知識不足で理論的な説明ができないが……
 歪曲の具合の参考として、メガネ越しにスマートフォンのカメラで撮影した画像を載せる。レンズとスマートフォンの距離、被写体までの距離等を固定して撮影できるわけではないので、あくまで参考だ。

ZEISSプンクタール(球面)

東海光学ベルーナJX-CVf(両面非球面)

 (ちなみに、ハイカーブレンズと言われるレンズは深いカーブを持つにもかかわらず見え方が悪いと言われているが、これはフレームそり角の影響で光軸が外を向くためにカーブが深くても非点収差が強く出るからである。真正面から見れば頂点間距離にもよるが見え方は良いはずだ)

 さて、つまり非球面設計というものの特徴は「薄い」。それで終わりだ。「いいレンズ」かどうかにはあまり関係がない。
 どころか、歪曲を考えると球面のほうがいいとすら言える。しかし樽型歪曲が大きいレンズも光軸中心付近でものを見る場合にルーペを通したようにわずかだけ大きく見えること、他者から見たときに輪郭のズレが小さく見えることというメリットもあるので、一概に悪いと断定できるものではない。私は嫌いだが。


  • おすすめのレンズ

 今までの話をまとめると、「いいレンズ」とは
・できればガラス
・高アッベ数(≒低屈折率)
・できれば球面設計
・機能性コーティングはお好きに
 というレンズとなる。視界の良さを追求すると、最も安いレンズが最も良いレンズとなるのだ。
 具体的なおすすめとしてはやはり私もメインで使用しているZEISSのプンクタール1.60か、ホッタレンズの1.7AE1-SVだろう。特に1.7AE1-SVは屈折率1.7でアッベ数52というスペックは唯一無二のものだ。非球面設計であるが歪曲もそこまで気にならない。ただしレンズ銘柄決め打ちで考えると売っている店が全く見つからずに苦労する可能性も高い。私は隣のそのまた隣の県までメガネを買いに行ったことがある。
 また、ZEISSや1.7AE1-SVでなくとも、プラスチックであってもこの方針は覚えておいて損はない。特に度数が強くない人の場合、高屈折率のレンズを選ぶのは無意味と言っていい。どうしても自分の視界よりも他者からの見た目を気にするという人でなければ、一番安いレンズを選ぶべきだ。
 メガネ屋の立場で考えれば高いレンズを売りたいのは分かる。ここで説明したような内容を全ての客に理解してもらうのも土台無理な話であるし、具体的に厚みの数字を提示して営業できる薄さ偏重の風潮になるのは十分理解でき仕方のないことだろう。
 なので視界の良さで選びたい人は自分で知識を付けて自分で選ぶしかない。この記事を読むことで良いメガネライフを送ってもらいたい。

 SIGMAのSportsラインフラグシップ、ゴーヨンを入手。私の所有レンズの中で最長の焦点距離、最大の入射瞳径のレンズだ。


 このレンズの特徴の一つは、SIGMA製レンズの中で唯一レンズ側に(切り替えスイッチではなく)ボタンがあることだ。レンズ先端側にあるボタンでAF-ON、AFL、フォーカスプリセットを使用できる。動き物を撮らない私は活用することはなさそうだ。


 また、レンズフロントキャップが一般的な超望遠と同じく布のかぶせ式になっている。この点は致し方ないが、脱着が面倒であり使い勝手は良くない。そう考えると120-300mmの105mmキャップは超望遠の入り口である300/2.8でも利便性を失わない便利な装備だった。キヤノン、ニコンは300/2.8でも布のかぶせ式となっている。まあ、300÷2.8の計算結果を考えると105mmのフィルタ径は良いことばかりでもないのだが。


 閑話休題、このレンズが間違いなく世界一と言いきれる点が一つある。三脚座である。50-100mmを持っている方ならわかるが、三脚座の回転に適度なトルク感がある。ピントリングやズームリングのトルク感は気にする人も多くメーカもこだわっている部分だが、三脚座にまでトルク感を持たせているメーカはなかなかない。更に縦位置横位置の切り替えを簡単正確にするために90度刻みのクリック感があり、のみならず一脚で流し撮りをする際にそのクリック感が邪魔になることがあるという声からクリック感のON-OFF切り替えまで装備している。一般的な三脚座はレンズを支えて角度が変えられればそれでよいというレベルで終わっているが、SIGMAはそこからひとつふたつ進んだ次元の三脚座を作り上げた。
 前述の通りスチル用レンズでもピントリング・ズームリングのトルク感を気にする人は多い。ならば三脚座でも同様に評価されることは考えてみれば当たり前だ。この三脚座は現在存在するレンズの中では確実に世界最高のものである。


 一つ辛いのが、アクセサリー類の値段だ。フロントプロテクターは専用品となり、定価54,000円。PLフィルタは専用のドロップインタイプが別売りで定価48,600円。三脚座をアルカスイス互換に換装するレンズフットは定価30240円。これらを一式揃えたらかなり良いレンズが買えてしまう。フロントプロテクターは専用のレンズキャップが付属するため使い勝手が向上するだろうし、PLも欲しくはあるし、レンズフットも全てアルカ互換で統一している身としてはあったほうが便利だが、流石にポンと買える値段ではない。数が出ないだろうから仕方がない値段なのだろうが……


 使い勝手の面では、やはり3310gは重い。105mm F1.4を特に重いと思わない私でも流石にこれは重い。しかし120-300mmより80g軽いのだ。更に重心位置を考慮すると120-300mmよりも多少扱いやすい。絶対的には確かに重いのだが、120-300mmよりはまだマシなレベルだった。

 以下、作例。

_DQH0932
【sd Quattro H, 500mm F4 DG OS HSM | Sports 016, @500.0 mm F4.0, 1/1250sec, ISO100】

_DQH0933
【sd Quattro H, 500mm F4 DG OS HSM | Sports 016, @500.0 mm F4.0, 1/320sec, ISO100】

_DQH0984
【sd Quattro H, 500mm F4 DG OS HSM | Sports 016, @500.0 mm F4.0, 1/80sec, ISO100】

_DQH0990
【sd Quattro H, 500mm F4 DG OS HSM | Sports 016, @500.0 mm F4.0, 1/125sec, ISO100】

_DQH0996
【sd Quattro H, 500mm F4 DG OS HSM | Sports 016, @500.0 mm F4.0, 1/100sec, ISO100】

_DQH0998
【sd Quattro H, 500mm F4 DG OS HSM | Sports 016, @500.0 mm F4.0, 1/100sec, ISO100】

 使ってみた感想としては、やはり重い。そして被写界深度が薄い。更にはかなりの大きさのため、このレンズが入るカメラバッグがない。持ち運びに難儀する。
 この被写界深度のおかげでピンズレにより歩留まりが悪い。手持ちのsdQHで使うにあたってはAF動作中に手ブレしているとAFの合焦率が著しく低く、そのためほとんどMFで撮影していた。
 画角と重さによって手持ちではどうしても手ブレが発生するが、補正が優秀なためか1/100ではほとんどブレは見られなかった。
 写真はすべて開放だが、ピント面の解像力に関しては文句のない描写をしている。さすが「MTF直線」だ。
 ボケに関しては後ボケは癖が少ないが、前ボケはややうるさく感じる。また、最後のバッタの写真を見ると開放では口径食があるためにグルグルボケ気味になっている。
 とはいえ総合的な描写としては大きな欠点はなく優秀だ。

 さて、このレンズ購入したはいいが、私はもともとここまでの望遠は殆ど使わないのだ。何を撮るか、どこに持っていくか悩む……