明るいDG Art単焦点の比較


 SIGMAがレンズラインナップをContemporary、Art、Sportsの3種類にコンセプトを分けるSIGMA GLOBAL VISIONがスタートして6年以上が経った。
 この間にSIGMAの本気のレンズであろうArtラインの明るい単焦点レンズは以下の10本が発売された。(DCの30mm F1.4は除く)
・14mm F1.8
・20mm F1.4
・24mm F1.4
・28mm F1.4
・35mm F1.4
・40mm F1.4
・50mm F1.4
・85mm F1.4
・105mm F1.4
・135mm F1.8
 私はこの10本のレンズすべてを購入し、所有している。
 これらのArtレンズは評価も高く、明るいレンズを購入したいと思った場合は有効な候補として挙がるだろう。その際、どのレンズを買うかは一般的な写真趣味者ならば「欲しい焦点距離のもの」になるだろうが、私のようなカメラ趣味のものにとっては「描写のいいもの」になる。
 そこでこれらのレンズを私の主観によるおすすめ順に並べ、それぞれ所感を述べる。購入の一助としてもらいたい。個別のレビュー記事を書いているレンズに関してはレンズ名にリンクを張っておく。
(なお、文中の「四隅」はAPS-CまたはAPS-Hでの隅のことであり、35mm判の隅は評価できない)


・1位 105mm F1.4
_SDI2320

 このレンズはArt単焦点という括りの中だけではなく、私の所有する全てのレンズの中で最も好きなレンズだ。ファインダーを覗いただけで感動したレンズはこれしかない。
 解像力は開放から素晴らしい上に1段絞ると四隅まで完璧になる。色収差はほぼ存在しない。ボケ味は素晴らしくSTFに迫るのではないかと思うクオリティ。唯一の弱点と思われる大きさ重さも、この描写の前には大した問題ではないと思わせるだけのパワーがある。
 描写に関しては欠点が見つからない。このレンズは被写体を問わずおすすめできる。

・2位 40mm F1.4
_DQH1028

 「ミニ105mm」という印象。このレンズも解像力は開放から抜群で、軸上色収差も少なく、ボケ味もいい。
 しかし重箱の隅をつつくと、105mmに比べると上に挙げたそれぞれにおいてほんの少しずつ遅れを取っているため2位とした。もちろん一般的なレンズに比べると非常に優れており、単に105mmが優秀すぎるだけなのだが。
 また、「ミニ」とは言ったが大きさはミニではない。今回取り上げるラインナップでは105mmに次いで2番目に重いのだ。135mmや85mmよりも重く、標準域のレンズとしては異常と言っていい。しかしこのレンズもそれだけの重さの価値はある。
 もう一点、40mmという焦点距離についても一押しとできるだけの理由がある。詳細は40mmのレビュー記事を読んでもらいたいが、私は標準レンズとしては50mmよりも優れていると考える。なぜ他社が40mmをラインナップしないのか不思議なくらいだ。この画角がほしいというだけでも選ぶ価値はあるだろう。

・3位 85mm F1.4
_DQH0173

 3位には85mmを選んだ。しかし、この3位から6位まではどれも同じくらい優れているレンズであり全て同率3位としたいくらいなので、この順位に深い意味はない。単に私の画角の好みと考えてもらっていい。
 この85mmもまた、大きな欠点が見つからないレンズである。私の大嫌いな軸上色収差も105mmには及ばないもののよく抑えられており、中望遠という画角もあって四隅までかっちりと写る。
 弱点としては、逆光に弱い。特にFoveon機との組み合わせでは見苦しい緑フレアが発生する。これは85mmや135mmまでの世代ではどれも似た傾向だ。

・4位 135mm F1.8
_DQH0656

 解像力では85mmを上回る。また、レンズ構成に非球面を使っていないのもこのレンズの特徴だ。私はあまり気にしないが、非球面を嫌っている人も多い。とはいえ、嫌う理由として考えられる玉ねぎボケの発生はこの85mmや135mm以降の世代では発生していないSONYもGMレンズで玉ねぎボケが発生しないことを宣伝しているが、SIGMAのレンズも同じレベルに立っている。個人的にはなぜこれをSONYと同じように宣伝していないのか不思議である。
 さて、このレンズの解像力に関してはこの記事を見てもらうのがわかりやすい。記事中では特に触れていないが、この等倍切り出しは135mmの開放でこの解像なのだ。もちろん、ボディがFoveon機であることも大きいが。

・5位 14mm F1.8
_DQH0669

 この世代のレンズからArtが逆光に強くなった印象がある。特にこの14mmは異様に逆光耐性が優れている。Foveon機では避けられないのかと思っていた緑フレアだが、このレンズではどれだけ意地悪な光線条件を試そうが緑フレアを出すことはできなかった。
 解像力も素晴らしく、14mmという焦点距離にもかかわらず四隅での像の流れなどは見て取れない。ボケ像も放射状にも同心円状にも流れはなく、非点収差が高いレベルで補正されていることがわかる。また、歪曲収差も非常に少ない。

・6位 28mm F1.4
_DQH1044

 Art単焦点レンズの中で最も新しいレンズとなる。
 6位という番付としたのだが、正直に言ってこのレンズは印象が薄い。というのも、これまで挙げたArtレンズの優秀さからくる期待に十分に応えてくれ、目立った欠点も見つからないからだ。優れているに決まっているものがそのとおり優れていた、という贅沢な理由であまり印象に残らなかったのだ。
 このレンズの評価は今までの繰り返しになってしまう。解像力は高く、軸上色収差は少なく、ボケ味もなかなか。

・7位 50mm F1.4
_SDI9852

 さて、「3位から6位はほぼ同率3位」と書いた通り、この7位からは今までとは少し違った評価となる。
 この50mm、発売は2014年4月である。すでに発売から5年。正直に言うと昨今のArtレンズのクオリティから比べるとすでに世代が違っている。もちろん描写は優秀であるしまだまだ一線級で使えるレンズであることは間違いなく、EXの50mmと比べると遥かに進化してはいるのだが、最新のArtが並ぶこのラインナップ内で順位をつけるとこの位置となってしまう。

・8位 20mm F1.4
_SDI0047

 20mmがこの位置となる理由は14mmの存在が大きい。14mmは逆光に強く像の流れもないのだが、20mmは周辺部の描写はイマイチでボケも条件よっては流れ、前ボケは二線気味だ。逆光耐性も14mmの強さに比べると劣る。
 14mmがあるならばいらないのでは……となってしまうのがこのレンズだ。あまり売れてないらしいレンズにこのようなことを言うのも悪い気がするが、20mmよりは14mmを買ったほうが幸せになれるだろう。

・9位 35mm F1.4
_DQH0598

 SIGMAがレンズラインナップを3種類に分けるSGVを発表した際、最初に発表されたのがこの35mmだ。発売は2012年11月。すでに6年以上前のレンズとなる。前項にも書いたとおり、すでに世代が違う。
 135mmの項で述べたが、85mmの世代以降では非球面による玉ねぎボケが発生していない。裏を返せばそれ以前のレンズでは非球面の玉ねぎボケがあるということだ。この35mmも例外ではない。(もしかしたら最近製造されたものであれば玉ねぎボケはないのかもしれない?)
 とは言え、定評あるArtレンズの一角であることには変わりはない。35mm(と24mm)は665gというArtレンズの中で最も軽量なレンズでもあり、その点だけでも価値はあるだろう。

・10位 24mm F1.4
_DQH0181

 SIGMAには悪いが、SAマウントでなければ他の選択肢を選んだほうがいい。解像力は28mmに全く及ばず、ボケ味が悪く二線ボケ・玉ねぎボケがある。軽いことしか利点がないのではと思ってしまうが、その軽さも「Artレンズの中では」というものだ。このランキングを作るにあたって中間の順位は少々悩んだが、1位と10位は一切悩まず決まっていた。このレンズはおすすめしない。

 各レンズへの思いを正直に語った結果7位以降が貶してばかりになったが、その分6位までのレンズの素晴らしさも正直な感想であることはわかってもらえるだろう。特に1位の105mmは特筆して優秀であり、2位以降とは格が2つ違っていると感じている。
 この中でおすすめなのはもちろんぶっちぎりで105mmなのだが、6位までのレンズはどれを買っても満足できるだろう。大きさと重さが許すのなら、だが。

1 件のコメント:

  1. フルサイズセンサーで使用しないと、28mmF1.4Artの性能など語れない。

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