SIGMAより105mm F1.4が発売された。今年のCP+で発表された中で最も期待していたレンズだ。
今回、レンズの付属品がいつもより多かった。レンズケースに取り付けるストラップ以外にストラップがもう一本、ビスが二本とビス用の六角、三脚座用の化粧リングが一個。
ストラップは三脚座に取り付けるためのものだ。私はストラップをつけるにしてもPeak Designのアンカーを付けるので無用。ビスはアルカ互換三脚座の底面に取り付け、対応する雲台で脱落防止ピンとして働く。私はこのタイプの脱落防止に対応する雲台を持っていないし個人的には邪魔に感じるので付けない。
三脚座は化粧リングがついてくることから分かる通り、脱着可能となっている。このため50-100mmや500mmのような上質な回転はなく、90度刻みのクリック感もない。しかしこの大きさのレンズに三脚座は個人的には不要に思うので、脱着できる方がうれしい。500mmはともかく50-100mmも脱着可能でもよかったなぁと思わないでもない。
しかしアルカスイス互換になったのはうれしい。マンフロット405もアルカスイス互換に改造している身にはわざわざプレートを付けなくて済むのはありがたい。
ハードウェア面ではフードがバヨネットではなく超望遠に付くようなネジでの脱着となったことも特徴的だ。フード先端がゴムとなっていることから考えてもおそらく前玉側を下に立てて置くことを想定したものではないかと思われるが、このサイズのレンズで立てて置くことがあるかは疑問に思ってしまう。バヨネットで脱着が楽なほうがよかった。
【追記】
フードがバヨネットでない理由は直径が大きいと強度面でバヨネットにできないかららしい。
今回からEマウント用も用意されている。レンズの全長がフランジバック分だけ長くなるためSLR用のパッケージでは対応できなくなるのでどのような対策を取るのかと思ったが、付属のレンズケースが上げ底構造になっていた。これなら詰め物を取るだけでEマウントにも対応できる。
描写に関してだが、CP+のセミナーの内容を聞くに素晴らしい写りをするはずだ。
では、以下作例。
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F2.8, 1/1000sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F2.8, 1/500sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F2.0, 1/2500sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/2500sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/2000sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/400sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F5.6, 1/60sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/1250sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/4000sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100】
【sd Quattro H, 105mm F1.4 DG HSM | Art 018, @105.0 mm F1.4, 1/250sec, ISO100】
素晴らしいの一言。撮っている最中、sdQHのファインダーを覗いているだけでもこのレンズはすごいと思ったが、現像して確信した。このレンズは本当にすごい。
まず解像力が素晴らしい。8枚目の古民家は後ろの草にピントがあっているのだが、開放でコレだ。これが本当に有効径75mmの大口径レンズ開放の描写なのだろうか。
軸上色収差は5枚目の厳しい条件かつ開放では緑色が見える。しかしその次の6枚目ではわずかに紫と緑が見えるが、拡大しなければわからないレベルだ。CP+のセミナーで軸上色収差が低減されたと語られていた内容は確かだった。他の写真も開放中心だが、それでも5枚目以外に目立つ軸上色収差は見られない。
ボケ味も十二分に良い。STFやBBLの暴力的なまでになめらかなボケを知っているとそれらには及ばないが、だがしかし、思わずそれらボケのために様々なものを捨てている特殊なレンズたちと比べてしまいたくなるボケなのだ。SIGMAが「BOKEH-MASTER」を標榜しているだけはある。ボケ味が良いだけのレンズはあまたあるが、そのうちこの解像力を併せ持っているものはまずないだろう。
また、被写界深度の薄さもとびっきりだ。さすが105mm F1.4。有効径としては135mm F1.8と同じなのだが、105mmのほうがシビアに感じた。私は普段ピントに厳密ではなく大抵は中央一点でAFを合わせコサイン誤差など気にせず撮影しているのだが、このレンズではコサイン誤差の存在がはっきりと分かってしまう。こういうときはフルタイムMFがありがたい。
さて、恒例の解像力チェックだが、これだけの描写を見せつけられて点光源がどうのこうの言う必要があるだろうか。このレンズにはそんな無粋なものは不要である。という理由1割、めんどくさいという理由が9割で割愛する。あれ、すごく手間がかかるのだ。
私は普段レンズやカメラのレビューにポエムをつけることはないが、このレンズを言葉で言い表そうとするとどうしても詩的になってしまう。
何気ない風景でもこのレンズを通すだけで「らしく」なるのだ。開放からキレるピント面と柔らかなボケが被写体をドラマチックに浮かび上がらせる。ここまでならば大口径レンズによくある謳い文句だが、このレンズのすごいところはその両方を極めて高いレベルで実現しているところだ。
ArtラインのDG単焦点レンズ全てを所有している私の個人的な意見としては、フラグシップを名乗るにふさわしいクオリティに仕上がっている。14mmの周辺画質や逆光耐性も素晴らしかったし、85mmや135mmの解像・ボケもよかったが、それでもこのレンズが一番だ。それほどこのレンズの衝撃はすごかった。
このレンズの不満点だが、フードがバヨネットだったらよかったなぁ、というだけ。描写には文句のつけようもない。重量も多少重めではあるがサイズがさほど大きくもないので、120-300mmのように構えていて辛いということはまったくない。このレンズのレビューでは判で押したように「重い、でかい」と言われているが、105mm F1.4というスペックならばこんなものだろう。むしろNikonのものが特別小さいのだ。なによりたった1.6kgでこの描写が得られると考えれば軽いものである。
私はこの105mmを1日使っただけで持っているレンズの中で一番好きなレンズに躍り出てしまった。
このレンズならば何でも撮れる。風景も人も、すべての被写体を魅力的に浮かび上がらせてくれるだろう。
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