ラベル 135mm STF の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 135mm STF の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

 レンズの性能のひとつとして語られることも多い「ボケ味」。これは評価としては他の解像力や色収差、歪曲などとは違って、見た目の印象からの定性的なものしかほぼ存在していない。
 そこで、ここではボケ味の良し悪しを決定するための一要素を計測し、光軸中心における特定距離の後ボケという限定的な領域での評価を行う。

 計測方法は以下。
・撮影対象は赤色LEDとする。
・レンズのピント位置は最短。ただし冒頭写真のように隣のLEDと重なりそうな場合は極力大きくなる位置とする。
・対象のボケは光軸中心に配置する。
・撮影距離はレンズによって適宜変更する。
・撮影後、ボケ部分のみを正方形にトリミングし、ニアレストネイバーにて100*100pixelに縮小、上下左右の四方向で中心からピクセルの明るさを記録し、その平均を取る。
・計測結果をグラフ化し、評価する。

 この測定方法では主に球面収差の影響が現れる。現実には光軸中心以外ではコマ収差・非点収差・口径食などの影響が現れるため、この結果はあくまでボケ味を構成する一要素しか判断できない。
 また、2パターン撮影したレンズの結果を見ればわかるが、撮影距離とピント位置の組み合わせで収差の変動がある。そのためSTFのような特殊レンズでなければピント位置によっては良くも悪くもなる可能性がある。


・SONY 135mm F2.8[T4.5] STF



 左側が中心、右側がボケの端になる。
 さすがSTF、見事な曲線で周辺が減光されている。ボケ味の絶対王者だ。
 意外だったのが50サンプル中22まではほぼ減光がないことだ。APDエレメントの構造上、中心からすぐに減光が始まっていると思っていた。


・Carl Zeiss Vario-Sonner T* 24-70mm F2.8 ZA SSM @24mm



 撮影環境の都合上、大きく撮影できなかったため50サンプルではなく45サンプルしか取得できていない。
 グラフを見ると外周部でやや明るさが増している部分があるが、中心よりは減光されているのでそこまで目立たないのではないかと思う。


・Carl Zeiss Vario-Sonner T* 24-70mm F2.8 ZA SSM @70mm



 見ての通り外周部で大きく明るさが増している部分がある。縦収差図ではややオーバーコレクションとなっているのではないかと思われる。
 このレンズは殆ど使っていないのでボケ味についての印象はないのだが、おそらく二線ボケするだろう。ただ前ボケに関してはなめらかな描写をしてくれるはずだ。


・50mm F1.4 EX DG HSM (BBL)



 ここからはsdQHでの撮影となるため、ベイヤー機に比べ細かい上下が敏感に現れる。
 改造レンズのBBLは傾向としてはSTFとよく似通っているが、Foveonでの撮影であることを加味しても細かい上下が多い。ボケをよく見てみると渦巻き模様のようなものが見える。凸と凹でAPDを構成するSTFとは違い、薄板でAPDを作っているBBLはこのような模様で効果を作っているのだろう。
 現実には放射状ではなく渦巻状となっているため、これが目立つことは少ないはずだ。


・85mm F1.4 DG HSM | Art



 明るさの分布はほぼ完璧に均一だ。おそらく縦収差図では収差が殆どないのだろう。
 これだけ均一であれば解像力も高いはずだ。この測定は光軸中心でのものだが、球面収差が少なければコマ収差も少なく、85mmという中望遠であれば非点収差も少ないはずなので画面全域で高い解像力が期待できる。というか実際に解像力は高い。
 ボケ味に関しては良くも悪くもなく、また前ボケと後ボケの差もほぼないだろう。
 また、非球面レンズには付きものと言われる年輪ボケ・玉ねぎボケと言われるような模様は見えない。面精度が高いということだろうか。


・135mm F1.8 DG HSM | Art



 135mmは85mmと同じ傾向だ。ごく僅か外周部で明るさが上がっている箇所があるが、二線ボケになるほどではない。
 今回の測定とは関係ないが、冒頭に載せた写真はこの135mmなのだがやや口径食が見られる。Art85mmより入射瞳径が大きいのに、なぜかフィルタ径は小さくなっている影響だろう。


・35mm F1.4 DG HSM | Art(その1)



 個人的にボケ味がよくない印象のあるArt35mm。
 このレンズは2パターン撮影しており、こちらは
撮影距離:0.95m
ピント位置:約0.4m
 という条件で撮影したものだ。
 見事な年輪ボケで外周部も明るさが多少高くなっている。ボケ味はあまり良くない。


・35mm F1.4 DG HSM | Art(その2)



 こちらの撮影条件は
撮影距離:0.6m
ピント位置:約0.3m
 となる。
 この条件も年輪だが、外周部の明るさ変化はあまりない。その1の条件よりはマシなボケで、85mmや135mmに近い傾向だ。


・24mm F1.4 DG HSM | Art(その1)



 Art24mmもボケ味が悪いため2パターン撮影している。
撮影距離:0.95m
ピント位置:約0.4m
 のパターンだ。
 ボケは年輪。最外周部が明るさのピークになっておりかなり悪い。おそらく縦収差図ではオーバーコレクション気味だろう。後ボケは二線ボケする。
 STFが良いボケ味の見本ならば、この24mmは悪いボケ味の見本のようだ。


・24mm F1.4 DG HSM | Art(その2)



撮影距離:0.6m
ピント位置:約0.25m
 のパターン。
 その1よりは良いが年輪はそのまま。最外周部がやや明るく、その範囲が狭い。Art35mmのその1のように明るくなってはいるが範囲が広い場合は目立ちにくいが、こちらは条件によっては二線ボケが見えるだろう。


 レンズ7本・10パターンの計測を行った。最初に書いているようにこの結果はボケ味の一要素でしかないが、使用していてボケ味が悪いと感じるものはグラフに如実に現れた。
 最初は得られた数値からボケ味を評価するスコアをつけようかと考えたが、うまいスコアの算出方法が思い浮かばなかったためやめた。
 他のレンズに関しては測定する予定はない。手動で1pixelずつ明るさを見ているので、手間がすごいのだ。

 SONY(MINOLTA)にはSTFという名レンズがある。
 これは光束周辺部を減光することでとろけるようなボケ味を作り出すものだ。
 同じボケ味改善の効果があるものにDC-Nikkorがあるが、これは球面収差の程度を変えることによって効果を得るもので、STFとは全く原理が違う。
 DC-Nikkorは改善できるのは前ボケ・後ボケのどちらかのみ、かつ収差を加えているため解像力が悪化する。対してSTFは前ボケ・後ボケ両方を同時に改善し、かつ収差の大きい周辺部が減光されることで解像力も向上する。デメリットとしては暗いためシャッタースピードが稼げないことくらいだ。(MFレンズであることは135mm特有のものでSTFの原理からくるものではない。ただしF5.6部分の光束も多少減光されているので、位相差AFが可能な最低輝度が他のレンズより高くなることは考えられる。)

 トップの写真はSTFによるものだ。後ボケも前ボケも非常に滑らかで美しいボケだ。
 しかし、左端の彼岸花の右側にやや違和感を覚える描写がある。


 ここだけボケのエッジが立ってしまっている。ほかのボケが滑らかであるだけあって、ここだけ異質に思えてしまう。

 この描写の原因を考える前に、STFの原理をざっくりと説明する。


 簡便のためレンズは一枚の凸レンズで表している。
 光軸中心・無限遠からの光束が入射する様子を表した図だ。STFではレンズの周辺の光を減光するため、像側の光束の断面を見ると上の丸のようにエッジが現れない。これがとろけるようなボケ味につながっている。通常のレンズでは濃度が均一な丸になる。
 (実際のSTFにおいて減光を担うAPDエレメントは均一な濃さの凹レンズになる。)

 次に点光源の後ボケ状態の模式図を示す。


 ピント面以外からの点光源は像面で焦点を結ばないため、ボケになって写る。

 さて、冒頭のエッジの目立つボケがどのような条件で現れるかだが、これは光源とレンズの間に障害物を置くことで説明できる。


 図はまっすぐな棒状のものを置いた際の模式図である。障害物によって光束の一部が遮られることで、光線の強度が高い中心部でエッジが発生してしまう。
 この障害物がピント面にある場合は、ボケの欠けた部分を障害物が埋めるためにボケが欠けたとは認識されない。しかし前ボケとなる領域にある場合はボケの欠けが目立ってしまう。特に障害物と背景が同色の場合には顕著となる。

 冒頭の写真の場合、おそらく前ボケで写っている彼岸花のおしべでボケが欠けたと思われる。障害物となったおしべ自体は前ボケとなって見えないほど溶け込んでしまったためにボケの欠けだけが残ったのだ。

 このボケの欠け自体はSTFに限らずどんなレンズでも発生する。しかしSTFの通常のボケが滑らかすぎるためにエッジが立っている部分が目立ってしまった。

 STFでボケのエッジを立たせないためには、このような光束の一部だけを遮る小さな前ボケは発生しないよう考える必要がある。とはいえ出先でそこまで考えて画作りをするのは難しい。STFにも弱点があるということだけ頭に入れておけば十分だろう。
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/1000sec, ISO100, 0EV】

 BBLという改造レンズが存在する。

BBL
http://bbllens.tumblr.com

 これはSONY(MINOLTA)の135mm STFのように、絞り近傍に周辺ほど濃くなるNDフィルタのようなものを置くことで、光束の周辺部を減光しボケの輪郭を柔らかくするものだ。
 この仕組みは富士フイルムの56mm F1.2 APDや、KickstarterでコケたCM33のウォーターハウス式絞り板のうちの一枚や、最近では中国のLAOWAが出したSTFのパクリなどいろいろなものが出始めている。
 BBLはおそらく構造としては富士の56mmやCM33に近いものであろうと推測される。

 このBBL、現在の対応レンズは7種類。
 そのうち一本がSIGMAの50mm F1.4 EX DG HSMだ。
 他のレンズも可能な限り対応するとある。しかし私が改造を頼むものはSAマウントレンズとなるので先方側で確認する手段を持っていないのではないかという懸念があり、実績のある50/1.4EXで依頼することとした。

 このBBL改造のために新たに50mm F1.4 EXを入手したので、まずは改造前に一度試写した。基本的に素のボケを見るためなので開放中心だ。

_SDI1218
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/1250sec, ISO100, 0EV】

_SDI1220
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F5.6, 1/400sec, ISO100, 0EV】

_SDI1228
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/4000sec, ISO100, 0EV】

_SDI1238
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/125sec, ISO100, 0EV】

_SDI1246
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/320sec, ISO100, 0EV】

 そこまで強い二線ボケはないが、軸上色収差によるボケの色付きが目立つ。BBL化によってこの色付きもマシになってくれるのではないかと期待しつつ改造を依頼した。

 懸念していた確認であるが、SAマウントであってもアダプタを介して種々確認は行ってもらうことができた。
 このBBL、使用上の注意として開放以外では露出がズレる。
 通常のレンズではF1.4からF2.0に絞った場合は光量が半分になるが、BBLでは周辺部の光量は非常に低いためにほぼ光量は変わらない。しかし開放測光のカメラではBBLのような特殊なレンズは想定されていない。
 そのため、開放以外の絞り値で適正露出で撮影しようとするときはマイナスの露出補正をかける必要がある。
 当初、絞りプレビューを押せば絞込測光をしてくれるかと思ったのだが、少なくともSD1 Merrillではそのような制御はないようだ。sd Quattroではどうなのだろうか。
 忘備録として付属した説明書に記載されているズレ量を書いておく。


絞り値(F)明るさ(T)ずれ(段)露光設定(段)
1.43.2-7/30
23.2-4/3-1
2.83.5-2/3-5/3
440-7/3
5.65.60-7/3

 この露光ズレの量を見ると、F1.4〜F2.0間で明るさ(T)が変わっていない。実際にF2.0に設定した状態で絞りプレビューを動かすと、前玉側から覗いても絞りは見えない。
 これは口径食軽減のため、F1.4〜F2.0間の光束を丸々捨てているためと思われる。こうしないと周辺部でのボケで56mm APDのようにエッジが立ってしまうのだろう。この調整は35mm判のイメージサークルに最適化してあるのか、それともAPS-Cに最適化してあるのかは不明だ。
 とはいえ、このレンズの旨味が最も生きるのは開放の時であるため、滅多なことでは絞らないと思われる。この設定値を覚えておくのも面倒だ。

 そして改造後。

_SDI1271 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1277 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1283 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/25sec, ISO100, 0EV】

_SDI1287 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/250sec, ISO100, 0EV】

_SDI1288 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1293 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/400sec, ISO100, 0EV】

_SDI1295
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/320sec, ISO100, 0EV】

_SDI1301 
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/800sec, ISO100, 0EV】

_SDI1306
【SIGMA SD1 Merrill, 50mm F1.4 BBL, @50.0 mm F1.4, 1/500sec, ISO100, 0EV】

 この仕組みのレンズの本家本元である135mm STFも所持しているが、それと比べても遜色ない。見事にボケが柔らかくなっている。富士フイルムの56mmなどとは比べるのも失礼なクオリティだ。軸上色収差による色付きもほぼ見られない。
 しかし、この挿入されたAPDフィルタの問題点も見えた。このフィルタ、ものすごく赤い。
 市販されているNDフィルタは色への影響を排し、純粋に明るさのみを変えるという売り文句で販売されている。BBLに使われているAPDフィルタはそういった部分はあまり配慮されていないようだ。
 ベイヤーならば問題ないようだが、色の分離の悪いFoveonでは致命的な問題となる。写真全体が赤被りしてしまう。
 RAWで補正できるならばまだいいのだが、ピンク色の被写体が写っていると補正は無理だ。ピンクが白になる。
 モノクロの写真はそういう理由で補正しきれず、モノクロに逃げたものだ。日陰での写真も補正しきれないものが多い。

 どれだけ赤いかは下のスクリーンショットを見て察して欲しい。



 もはやモノクロにするしかない。

 ちなみに本家135mm STFでは下のような描写となる。

DSC03688
【SONY DSLR-A900, Minolta/Sony 135mm F2.8 [T4.5] STF, @135.0 mm F4.5, 1/800sec, ISO100, 0EV】

DSC03669
【SONY DSLR-A900, Minolta/Sony 135mm F2.8 [T4.5] STF, @135.0 mm F4.5, 1/640sec, ISO100, 0EV】

 こちらもとろけるようなボケ味、すばらしい。

 ボケ味はSTFと遜色ない。その他実用性はSTFがMFのみであるのに対して、BBLではAFが可能だ。
 しかしBBLでは絞った際の露出ズレのほか、上に挙げた赤被りがある。これは致命的だ。露出ズレ程度は補正量を覚えておけば済む話だが、赤被りはどうしようもない。
 改造元へもう少し色被りのないAPDが作れないか、問い合わせ中である。

2016/5/30追記
 BBL改造元より連絡があり、レンズの再改造を行って貰えることになった。
 再改造が完了したら再度更新を行う。

2016/06/13追記
 改造元より原因の特定と旧改造品・再改造品での比較写真を貰った。見事に赤被りが解消されていた。
 再改造品については別記事に纏める予定。

2016/6/19追記
 再改造品の記事を上げた。
 ミノルタのα-7には「STFモード」というものが存在する。
 これは絞り値を変えた写真を7枚多重露光することで135mm STFのようにボケの輪郭を柔らかくするものだ。この動画がわかりやすい。
 「これってデジタル時代の今なら簡単にできるんじゃね?」と思ったのでやってみた。

 一枚目、F1.4から2/3段ずつ絞りを変えて9枚撮影。それを加算平均コンポジットしてみた。
 まずは普通に撮影したもの。F1.4とF4.5を載せる。

【SIGMA SD1 Merrill, Art 50mm F1.4, @50.0 mm F1.4, 1/160sec, ISO100, 0EV】

【SIGMA SD1 Merrill, Art 50mm F1.4, @50.0 mm F4.5, 1/15sec, ISO100, 0EV】

 そしてこれらを加算平均コンポジットしたもの。


 ボケの大きさはF4.5のものと同じくらいに見えるが、明らかにボケの輪郭が柔らかくなっている。

 ではもう一枚。玉ボケではどうだろう。
 このような景色をボケさせて合成してみる。

【SIGMA SD1 Merrill, Art 50mm F1.4, @50.0 mm F4.5, 4sec, ISO200, 0EV】

 合成したものが以下。


 これはひどい。見事に同心円が出ている。
 連続的な変化を与えるSTFとは違い、離散的な変化の重ねあわせになってしまうため玉ボケには向いていないのだろう。

 この手法では以下の問題が生まれる。
・当然三脚前提
・当然静物限定
・玉ボケは同心円状になるため避けたほうが無難
・撮影時の手間が多い
・撮影後の画像処理にかかる手間も多い

 これらの問題を許容して得られる価値が有るか? それは各個人にもよるだろう。
 私は素直に135mm STFを使おうと思う。