SIGMAのArtレンズに105mm F1.4と135mm F1.8というレンズがある。
この二つの入射瞳径を比較してみると105/1.4 = 135/1.8 = 75mmとなり、どちらも入射瞳径は同じであることがわかる。
入射瞳径はボケの大きさに影響することは有名だが、それではこの同じ入射瞳径を持つレンズではどちらのほうがよりボケるのか。計算により確認してみた。
過去にフォーマットサイズによるボケ量の違いを計算した際の数式を流用する。
フォーマットサイズによるボケ量の変化 | 五海里
http://illlor2lli.blogspot.com/2016/08/blog-post.html
後方被写界深度 = (R^2*δ*F)/(f^2-R*δ*F)
R : 被写体までの距離[mm]
δ : 許容錯乱円直径[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]
この式は以下のように読み替えることができる。
δ = d*f^2/(R*F*(R+d))
δ : 像面上のボケの大きさ(後ボケの場合)[mm]
R : 被写体までの距離[mm]
f : レンズ焦点距離[mm]
d : ピント位置からボケ光源までの距離[mm]
この式に条件を付け加えていこう。
まずは入射瞳径が同一であるという条件のため、F値を入射瞳径に置き換える。
F = f/D …①
D : 入射瞳径[mm]
δ = d*f^2*D/(R*f*(R+d))
= d*f*D/(R*(R+d)) …②
次に焦点距離が変わっても被写体の大きさが変わらないよう、被写体までの距離を置き換える。計算を簡単にするため35mm判前提で対角線ではなく横方向の長さで考える。
A/R = 36/f
R = A*f/36 …③
A : 横画界[mm](ピント面にて写る範囲の横方向の長さ)
この式を②に代入し、
δ = d*f*D*36/(A*f*((A*f/36)+d))
= d*D*36/(A*((A*f/36)+d)) …④
ここで定数をすべてまとめる。
d(ピント位置からボケ光源までの距離)
D(入射瞳径)
A(横画界)
が撮影条件と入射瞳径が同一である条件により定数となるため、それぞれ定数の項をA・B・Cに置き換えると
δ = A/(B*f+C) …⑤
となる。
⑤を見ると入射瞳径が同じ条件ならば、焦点距離が短いほど(F値が小さいほど)ボケが大きくなることがわかる。冒頭の例で言えば135mm F1.8よりも105mm F1.4のほうが、他社レンズで言えば400mm F4よりも200mm F2のほうがボケが大きい。
(ちなみに被写体までの距離を変えずに比較すると、撮影される写真が全く違うものになるが焦点距離が長いほうがボケが大きくなる)
それでは具体的な数字で計算してみよう。
カメラの被写界深度の計算 - 高精度計算サイト
https://keisan.casio.jp/exec/system/1378344145
ここで135mm F1.8、被写体までの距離10mのパターンでは被写界深度が593.11mm。105mm F1.4、距離は同一画界となるよう7.77m(105/135*10)では461.31mm。
焦点距離が短い105mmのほうが被写界深度が薄い(ボケが大きい)ことがわかる。
実際に105mmを使用した際は135mmよりもピントがシビアだった印象があったが、計算上その印象は正しかったことが確認できた。
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